自証分と証自証分

意識が自らの現在の状態を知ることは、すなわち反観であり、証自証分である。自らの現状を知らない時、意識の反観力が弱く、心が粗雑で智慧が劣り、定力がないことを示す。多くの人は煩悩が現れても自覚せず、無知の状態にあっても無知を悟らず、このような意識心は根本的に覚醒せず、反観力がなく智慧性が極めて低い。念々に自覚し、時時に自らを覚知する、これが意識の証自証分である。知ることは自証分、自ら知ることは証自証分である。証自証分には二つの知があり、自証分には一つの知がある。

意識が自らの状態を知り、自らを理解し認識することは証自証分であり、自己覚知とも称され、自覚とも、了知に対する了知とも言う。人は自らを知る明らかさを得ることが稀であるが、証自証分は即ち明であり慧であり、このような人は理性と定力を具え、導かれ易い。

いわゆる自証分とは、自ら相分を了知し、相分を証得し、相分を知ることを指す。知るという作用は、何を対象としようと全て自証分に属する。相分が生起する時、相分の存在を知る。知ることは見分であり、見分と相分が存在する中で知ることは自証分である。例えば「見る」は見分（未だ結果を得ず）、「見えた」は自証分（見分と相分を含む）。「聞く」は見分、「聞こえた」は自証分。これらを類推すれば、結果を伴うものが自証分、未だ結果なきものが見分である。自らを反観し、一切の行為を監視するのは証自証分である。心に警覚ある者は証自証分が現前し、警覚なき者は必ずしも証自証分を具えていない。

眼識の証自証分を例示すれば、眼識が陽光を見て「まぶし過ぎて目が痛い」と感じた時、眼識は直ちに目を閉じて見ることを止める。やがて意根が太陽を貪るか何らかの理由で陽光を見ると決断すれば、眼識は止むを得ず徐々に目を開く。これは眼識の見分・相分・自証分が既に現起した状態である。証自証分はどこにあるか。その後如何に展開するか。眼識が止むを得ず再び陽光を見ようと徐々に目を開く行為は、眼識が陽光の眩しさを認識した証自証分を示す。眼識は先の苦受を知覚した故に太陽を見ることを拒みつつも、意根の命令に従わざるを得ず、漸次的に目を開くのである。

太陽を見る過程には当然意識の証自証分も存在する。眼識の証自証分は意識と切り離せず、さもなくば五識は現起し得ない。意識が自らの感受を了知しなければ証自証分はなく、意識が自らの感受を了別すれば証自証分が生じる。眼識が自らの感受を知ることは眼識の証自証分であり、この時意識に必ずしも証自証分が存在するとは限らない。眼識の感受を如何に区別し了別するかは、意識の智慧の有無にかかっている。

眼識の苦受には通常、眼識の知と意識の知が併存する。意識は眼識の不快を認識し得るが、意識の苦受は意識のみが知り得て眼識は知り得ない。五識と六識の知覚と感受は区別される。例えば痛みを感じる場合、身識が感じる痛みは肉体本来の痛みであり、意識が感じる痛みは内面の苦受である。時に身識は激痛を感じても意識は苦痛と感じず、寧ろ快楽を覚える者もいる。頭懸梁錐刺股の故事や自傷行為に耽る者もこの類である。