衆生無辺誓い度す
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日常開示

2019年01月18日    金曜日     第1 回の開示 合計1185回の開示

唯識の視点から見る脳の「代償機能」

問:最近インターネットで動画を見ました。生後6ヶ月の子供が強い恐怖体験をした後、知能に障害が生じ、言語能力・行動・対人コミュニケーション能力が深刻に損なわれたものの、成長後驚異的な数学的計算能力を示し、ほぼ世界最高水準に達しコンピューターにも匹敵するという事例です。仏教の唯識論でこの現象をどう解釈しますか。

答:生後6ヶ月の乳児の脳(勝義根)は未発達です。現代医学では新生児の頭蓋容積が成人の4分の1、6ヶ月児でも成人の半分未満とされ、意識心と身体臓器は極めて脆弱です。強い恐怖により意根が異常反応すると、神経システムに変調をきたし気血の循環が阻害され、脳部位の活動が停滞します。これにより勝義根の特定部分の機能が損傷を受けます。

心臓の血液循環に異常が生じ全身への供給が阻害されると、脳の発育障害を引き起こし、所謂「脳障害」状態に至ります。ただし脳機能は完全喪失ではなく、勝義根の一部が損傷して機能不全に陥ると、他の部位が代償的に機能を強化します。これが医学で言う「代償機能」であり、年齢が低いほどこの機能は顕著に発揮されます。

脳後部の勝義根は極めて複雑な構造をなし、各領域が特定の身体機能を司ります。脳全体は四大種子(地水火風)で構成され、大脳皮質・神経線維などの固形物質、脳脊髄液・血液などの液体物質は全て物質色法に属します。脳を循環する血液は四大の栄養素を運び、勝義根の発育と活動を支えます。これらの栄養素は大脳の思考活動、意識心や六識の了別作用に影響を及ぼします。恐怖体験による血流異常が局所的に発生すると、該当脳組織の発育停止や萎縮を招きます。

正常時、四大栄養素は脳全体に均等に分配されます。物質色法の不均衡な分配により、勝義根の特定領域が過剰な栄養を得ると、該当部位の機能が異常発達します。逆に栄養不足の領域は機能減退・萎縮を起こします。

この児童の場合、数学的思考が特異的に発達した反面、言語機能等に障害が現れ、歩行異常(小脳機能障害)も認められます。減退した機能は代償機能が発達した領域に転用されたのです。

代償作用は色法と心法の両面で生じますが、「代償」という表現は正確性を欠きます。正確には特定の思考機能が補償作用により超常的に発達した状態です。該当機能に対応する勝義根が、本来他の脳領域に供給されるべき四大栄養素を摂取しているためです。

色法面の解釈に加え、心法面では正常な勝義根発育を持つ者の六識機能は均衡発達しますが、本児は恐怖体験による六識発達の不均衡を生じました。言語・行動・対人能力等の六識機能が常人より明らかに劣る反面、数学的思考・計算・記憶能力が特異的に補償発達したのです。現代医学が勝義根の機能詳細分類と対応脳領域の解剖学的同定を可能にすれば、数学的思考を司る脳組織・ニューロンの特異的発達を確認できるでしょう。六識は根(感官)と塵(対象)を縁として生起し、勝義根の強弱が意識思考に直接影響を与えます。

医学的知識が不足しているため生理学的詳細は説明できませんが、唯識論の観点から例示すれば以上の通りです。

——生如法師の開示
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