現量と非量の重大問題

昨日、ある人物が各種データ指標に基づいて分析・予測し、本日株価が10％上昇するとしました。結果、本日は確かに10％上昇し、寸分違わず非常に正確でした。この人物の昨日の予測は現量でしょうか。この人物が本日の株価推移と技術データ指標に基づき、明日株価が2％下落すると分析・予測しました。明日になると、確かに株価は2％下落しました。では、この人物が本日分析・予測した内容は現量でしょうか。いずれも現量ではなく、予測は全て非量です。たとえデータが正確無比であっても、株価動向は自ら目撃したものではないため、現量とは言えません。データ指標に基づく導出、思考、分析、推測、推理は、すべて非量となります。私が「あなたは明日悪事を働くだろう」と予測しても、現時点では実際に悪事を働いていない以上、悪事は事実ではなく、独頭意識による予測・推測の産物です。ゆえに現量ではなく非量です。現量とは、その場で彼が悪事を働いているのを目撃することですが、実は彼が善行をしている場合、あなたの見たものも非量となります。

私は両手を握り拳にし、一方の拳には百円玉を握り、もう一方は空の拳とします。そして右拳を差し出し、「この拳の中に硬貨はありますか」と尋ねます。相手は考えた末「硬貨があります」と答えます。正解を当てたことを祝福しますが、それでもこれは非量であり現量ではありません。この答えは彼が現量観察によって得たものではなく、推測によるものだからです。もし現量観察によるものだとするなら、彼は拳の中に硬貨があるかどうかを見ていないはずです。神通力があれば天眼で見たものも現量見となりますが、彼に神通力がない以上、肉眼で見えないものは直接見たことにはならず、あくまで推測・臆測・推論による非量となります。事実を見ていないものは非量であり、現量ではありません。

では、いったい何が現量なのか、皆様は今この瞬間に真に理解できたでしょうか。現量とは現前に存在する法を、自らの目で誤りなく見ることです。これが現量観察であり、現量による智慧の認知です。現実に存在しない法、現前に見えない法を、独頭意識で思考・推測・想像するのは、純粋な非量です。株価動向は現前には存在せず、翌日になって初めて見ることができます。現時点での見解や結論は自ら目撃したものではなく、心の中の推測や予想は当然ながら想像の非量です。予測がどれほど正確でも、自ら目撃したものではなく、現前で株価指数の推移を観察して得たものでない以上、100％非量なのです。

同時に比量（推理知）でもありません。法と法の間の平等な比較がないからです。比量とは二つ以上の法を相互比較して導き出される結論であり、複数の法が併存する関係性の中で相互比較が可能です。比較なしには結論も決定もできません。自ら目撃することと想像することでは、智慧の認知、心境、覚受が同じでしょうか。親族が徐々に死にゆく光景を目の当たりにするのと、将来の親族の死を想像するのとで、心境や覚受は同じでしょうか。親族の死を想像する場合、たとえ誰もが将来必ず死ぬとしても、現時点では親族は生きています。自ら死を目撃するのと、心境や覚受が同じと言えるでしょうか。

多くの人々が学んだ如来蔵の理論、如来蔵の種々の機能作用や体性に基づき、「如来蔵とはある場所・ある界・ある根・ある法において特定の機能を発揮するものだ」と推測し、それによって自ら如来蔵を親証し、悟りを開き心を明らかにし、聖人になったと主張します。この誤解はあまりにも大きく、結果も甚大です。あたかも貧しく賤しい身分の者が、自らが帝王になったと想像し、この想像の境界を真実と思い込み「自分は帝王だ」と宣言するようなものです。結果、真の帝王がこれを知って激怒し、兵を派遣して彼を捕らえ斬首の上さらし者にします。如来蔵が特定の作用を及ぼすことを想像し「自分は悟りを開いた聖人だ」と宣言する結果は、斬首晒しよりもはるかに深刻です。修行は慎重を期さねばなりません。

大妄語の問題点はどこにあるのでしょうか。現量と非量の区別が理解できていない点にあります。何が現量観察であるかを理解せず、推測・分析・思考によって導き出されたものが本質的に非量であって現量観察ではないことを理解していません。現量と非量を区別できないこの問題は非常に深刻です。多くの人々は、自ら導き出した結論が推測や推論によるものであり、自ら目撃した現量見ではないことを明確に認識していません。そのため、自ら何らかの結論を導き出した時、自らが現量で証得したと思い込んでしまうのです。実際には全くそうではなく、非量による想像と推測・推理に過ぎません。特に禅定（瞑想による精神統一）のない者は、全て意識の導出作用によるものです。禅定があっても浅い者も、意識の導出作用があります。禅定が深い者でも、思考している瞬間に深い禅定状態ではなく、意識を用いて思考している場合は、全て意識の導出作用となります。ゆえに、禅定があるからといって必ずしも現量証得とは限らないのです。