無辺称王が他方の国土を遊歴する
原文:大王よ。かの無辺称王はまたある時、このように思惟した。「我は今、東勝神洲に往くべきである」。この念いを起こすや、王は四兵を率い、共に虚空に乗じて即ちその処に至った。かの諸々の小王たちは皆来て奉迎し、各々国土を以て虔誠に献じた。王は彼の地に百千万歳住した。
釈:大王よ、あの無辺称王はまたある時、このような念いを起こした。今こそ東勝神洲へ往くべきだと。この念いを起こすや、無辺称王は四種の兵を率いて空を飛び東勝神洲に至った。東勝神洲の小王たちは皆出迎え、各々自らの国土を虔誠に無辺称王に奉献した。無辺称王はそこに百千万年住んだ。
この転輪聖王はかくも富貴自在でありながら、なお飽き足らず、東勝神洲で逍遙娯楽しようと企てた。かの地の小王たちは悉く彼を奉迎した。彼の福徳が大なる故、即座に平伏して臣従したのである。もし当地の小王の福徳が大ならば、必ずや彼を追い払ったであろう。福徳が同等ならば互いに戦争する。多くの家庭もまた同様で、福徳大なる者に従う。かの小王たちは皆自らの国土を奉献し、彼に統治を委ねた。彼の寿命は百千万歳を遥かに超え、当時の寿命は極めて長く、劫数で計られる。弥勒仏の時、南瞻部洲の人の寿命は八万四千歳であり、これより更に長久なる寿命もある。経典によれば、仏が弟子たちに授記を与える時、その臣民の寿命は二十劫、四十劫、あるいは無量劫に及ぶ。一劫は千六百八十万年、彼らの寿命は実に長大なるものである。
原文:大王よ。かの無辺称王はまた自ら思惟した。「我は今、西牛賀洲に往くべきである」。この念いを起こすや、四兵衆を率い、共に虚空に乗じて即ちその処に至った。かの諸々の小王たちは皆来て奉迎し、各々国土を以て虔誠に献じた。王は彼の地に百千万歳住した。
大王よ。かの無辺称王はまた自ら思惟した。「我は今、北倶盧洲に往くべきである」。この念いを起こすや、四兵衆を率い、共に虚空に乗じて即ちその処に至った。かの諸々の人々は歓喜して帰化した。王は彼の地に百千万歳住した。
釈:仏は言われた。大王よ、無辺称王はまたこのような念いを起こした。今こそ西牛賀洲へ往くべきだと。この念いを起こすや、四種の兵を率いて宝馬・宝象・宝車などの飛行具に乗り、空を飛んで西牛賀洲に至った。西牛賀洲の小王たちは皆出迎え、各々自らの国土を虔誠に奉献した。無辺称王はそこに百千万年住んだ。
次に無辺称王はまたこのような念いを起こした。今こそ北倶盧洲へ往くべきだと。この念いを起こすや、四種の兵を率いて空を飛び北倶盧洲に至った。かの地の人々は歓喜して無辺称王に帰依し、無辺称王はそこに百千万年住んだ。
原文:大王よ。かの無辺称王はまた自ら思惟した。「我は昔、三十三天が須弥頂に住すと聞いた。今こそ往くべきである」。この念いを起こすや、即ち龍象に乗り、四兵衆と共に空中を飛騰し、須弥頂に上った。時に無辺称王は御臣に問うた。「汝は須弥山と大海、四天下の有様を如何に見るか」。御臣は答えて言った。「私はその相が旋転不定なるを見ます。陶芸家の輪の如し」。王は御臣に語った。「汝の見る所は、この龍象王の大行未だ止まざる故である」。王はさらに前進し、御臣に問うた。「須弥山等の相を如何に見るか」。御臣は答えて言った。「私は今、須弥山と大海が悉く震動するを見ます」。王は臣に語った。「今や須弥山頂に至らんとす。この龍象王の小行未だ止まざる故である」。王はさらに前進し、御臣に問うた。「須弥山等の相を如何に見るか」。御臣は答えて言った。「私は今、須弥山と大海が動かず転ぜざるを見ます」。王は臣に語った。「この龍象王は今や須弥山頂に到着したのである」。
時に無辺称王と四兵衆は須弥山に到着した。かの帝釈天主は即ち遥かに無辺称王を見て、歓喜して来迎し、このように言った。「善来たれ、大王よ」。即ち半座を分かち、王をして座せしめた。時に無辺称王は即ちその座に就き、天上に無量歳住し、かの天主と半座を分かち共に治めた。
釈:仏は言われた。大王よ、無辺称王はまたこのような念いを起こした。昔、須弥山頂に三十三天が住むと聞いた。今こそ往くべきだと。この念いを起こすや、龍象に乗り四種の兵と共に空中を飛騰して須弥山に向かった。この時無辺称王は側近の臣に問うた。「須弥山と四大海、四天下の有様は如何に」。臣は答えて言った。「それらの相は旋転して定まらず、陶芸家の輪の如くでございます」。無辺称王は言った。「汝の見る相は、乗る龍象が疾く飛ぶ故である」。
無辺称王はさらに飛行を続け、臣に問うた。「今、須弥山等の相は如何に」。臣は答えた。「今、須弥山と大海が悉く震動するを見ます」。無辺称王は言った。「それは須弥山頂に近づいた故である」。無辺称王は龍象に乗り緩やかに飛行を続け、臣に問うた。「今、須弥山の相は如何に」。臣は答えた。「今、須弥山と大海は動かず転ぜざるを見ます」。無辺称王は言った。「今や龍象王は須弥山頂に到着したのである」。
無辺称王と四種の兵が須弥山頂に到ると、三十三天の帝釈天主は直ちに無辺称王を遠くに見て歓喜して出迎え、「善来たれ、大王よ。歓迎します」と言った。そして自らの宝座を半分分けて無辺称王を座らせた。この時無辺称王は即座にその座に就き、無量歳の間そこに住み、帝釈天主と共に三十三天を治めたのである。
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