父子合集経講義（一九七）

 一切の法は生滅し虚妄である

原文：大王よ。身識が生起する時、来るところなく、滅するも至るところなし。彼の縁が生起する時、来るところなく、滅するも至るところなし。彼の業が生起する時、来るところなく、滅するも至るところなし。大王よ。この世から他世へ至るいささかの法も存在せず。何故ならば、自性空なるが故に。

かくの如く了知すべし。初識は初識空、自業は自業空、身識は身識空。滅すれば滅空、生ずれば生空。輪廻は輪廻空、涅槃は涅槃空。皆な自性空にして、作る者もなく、受くる者もなし。業も報いも、皆な得ること能わず。ただ名相のみが分別を顕わす。

釈：仏は説きたまう「大王、身識が生起する時、来る所なく、滅するも去る所なし。業縁が生起する時もまた来る所なく去る所なし。業行が生起する時も同様に来る所なく去る所なし。大王、この世から他世へ至るいささかの法も存在せぬ。何故ならば、一切法の自性は空なるが故に」

われらはこのようにして身識を了知すべく、身識の自性空を了知すべし。このようにして自らの身識心が造作する業行を了知し、業行の自性空を了知すべし。このようにして初識を了知し、初識の自性空を了知すべし。このようにして一切法が生ずればその生は空なり、一切法が滅すればその滅は空なりと了知すべし。同時にまた業行の造作と流転には作者もなく受者もないことを了知し、一切法はただ仮相と名相の分別によって顕わされるに過ぎぬことを知るべきである。