父子合集経講義（一八四）

いかにして更に解脱の機会を得るか？

業行は東西南北四維上下の中間に依って住せず。業の消滅する処も存在する処も見出せない。もし業行を貯蔵すべき処あらば、まことに恐ろしきことなり。何処かにこれらの業を蓄積すれば、遅かれ早かれ必ず顕現す。業が誰に付き従えば、その者は災いに遭う。業は貯蔵すべき処なく、来るに蹤跡なく去るに影響なし。業行に貯蔵すべき処なきも、寿命尽きる時、この一生に造りし業の全てが心中を疾走し過ぎ、意識心も感じ知り得、明らかに分別し得、心に全て了知し、一つの過誤も漏らさず。その時自らの赴くべき処を知るが故に、親族が自らを業障より解脱せしめんことを切に願うも、既に言葉を発する能わず、表現すること叶わず。中有の身に至りて親族に告げんと欲すれども、陰陽隔たり通じ難く、二つの世界の者、言語通ぜず。

識滅した後、この世は終焉を迎え、人生の夢に終止符を打つ。今思えば、現実生活も真に夢中の如し。六識滅した後は業に随って流転す。意根が五陰身を欲する故に、阿頼耶識が相応じて中有の身を現起す。極善極悪の者には中有の身なく、極悪人は地獄に堕ち、中有の身なし。この息絶ゆるや地獄身即ち現起す。極善の者死後は天人の色身現起し、直ちに天に生じて福を享く。地獄身現れ出でたる時、仮りに悪業を造りしを悔ゆるも、懺悔補救の機会なく、中有の身にあっては尚懺悔可能なり。親族も或いは補救し得んが、中有の身なければ叶わず、業種定まる。但し覚りある者地獄にあって地獄身を以て懺悔し、力充分に、心力強きならば、地獄を出づることも可能なり。福報大なる者には、死後地蔵菩薩地獄門前に待ち受け、懺悔或いは仏法の偈頌を教え、共に誦すれば地獄業消滅し地獄を出づ。菩薩戒を受けたる者地獄に堕ち、犯した戒律を知り心に懺悔すれば、業を消し地獄を出づることも可能なり。

故に我等平常の修行において、福を積み智慧を修め、悪報を受くる時解脱の機会多く得んことを要す。唯福徳を欠き、法を用いず、自らの業行を懺悔するを知らざるを憂う。経を聴き法を聞くこと多ければ、解脱の智慧もまた多くなるべし。