堕天使

初めに地球は空しく人もいなかった。

天使が降りて地肥を貪り食らった。

体が重くなって飛び立てず、翼は折られた。

地球上に遂に人類が現れ、始祖となった。

故に私の祖先は堕ちた天使である。

しかし私は天使ではない。

純粋な人類である。

堕天使の子孫であり、

幾世もの輪廻を経て、

既に天使の名はなく、

天使の尊容も神通力も失っている。

従って私もまた堕落している。

何故天使は堕ちたのか。

ただ地上の地味に貪り食らったためである。

ここに於いて地上で生息し繁殖した。

初めは雲のように身は軽く、心は欲念から離れ清浄であった。

後に貪欲が次第に染み、男女二性が生じた。

それ故に遂に子孫が繁殖し、

代々にわたり部族・集団・家・国が生まれた。

遂には族長や王侯が部族国家を治めた。

人類の習俗は次第に固有化し、

田を耕し布を織り、婚姻し嫁娶し、財・色・名・食・睡に

欲染は熾盛となり、求めても人の世界の事物に過ぎない。

牢獄に囚われて、いつ再び天使に戻れるのか。