父子合集経講話（一四五）

夢の中で鼻根を断ち切られるのは実在するのでしょうか。

原文：大王よ、例えば人が眠りの夢の中で、かの非人によって鼻根を断たれたとします。どう思われますか。この人が目覚めた後、夢の中で鼻根が損なわれたことを思い続けるのは、実在することでしょうか。王は「そうではありません」と答えました。仏は言われました。「大王よ、この人が夢に見たことを実在だと執着するのは、賢明な人でしょうか」王は「世尊、賢明ではありません。なぜなら、夢の中にはそもそも鼻根が存在せず、ましてやそれが断たれることなどありえません。この人はただ空しく心を悩ませているだけで、実体など全くないのです」

釈：大王よ、例えば人が眠りの夢の中で非人に鼻根を断たれたとします。どうお考えですか。この人が目覚めた後、夢の中で鼻根が破壊されたことを繰り返し回想するのは、実在する事柄でしょうか。浄飯王は「実在しません、世尊」と答えました。

仏は言われました。「大王よ、この人が自ら見た夢の内容を実在だと執着するのは、智慧ある者でしょうか」浄飯王は「智慧ある者ではありません、世尊。なぜなら、夢の中にはそもそも鼻根というものが存在せず、ましてやそれが断たれることなどあるはずがありません。この人はただ徒らに心を苦しめているだけで、実体など全くないと知るべきです」

非人とは人類に属さず、阿修羅、夜摩羅、迦楼羅、鬼神などの類を含みます。これらは人ではなく、多くは人間の護法神としても活動します。彼らは悪業も善業も造る存在です。