夢の中で塗香を施すことは実在するのでしょうか。
原文:大王よ、例えば人が眠りの夢中で栴檀香、あるいは多摩羅葉香、その他の香りを以て身に塗布したとします。いかがお考えですか。この者が目覚めた後、夢の中で塗った香りを追憶する時、その塗香は実在するでしょうか。王は答えられました「実在しません」と。
仏は続けられました「大王よ、この者が夢の内容を実在と執着することを、賢明であると言えるでしょうか」。王は答えられました「世尊、賢明とは言えません。その故は、夢中にはそもそも諸々の香りが存在せず、ましてや身体に塗布する行為などあり得ないからです。この者はただ徒らに心を疲労させただけで、実体など全く存在しなかったのです」。
釈:仏は説かれた「大王よ、例えば人が夢の中で栴檀香や多摩羅葉香、あるいは他の香りを身体に塗ったとします。この者が目覚めた後、夢の中で塗った香りを追憶する時、その行為は実在したと言えるでしょうか」。浄飯王は「実在しません」と答えられた。
仏は説かれた「大王よ、この者が夢を実体と執着することを、智者と言えるでしょうか」。浄飯王は「智者とは言えません、世尊。なぜなら、夢中にはそもそも香りが存在せず、まして塗香の行為などあり得ないからです。この者はただ空しく妄想し、心を労しただけで、実在するものは何もなかったのです」。
夢の中の塗香行為が虚妄であるように、夢を見るという行為自体も虚妄です。ではこの人は夢を見たのでしょうか。確かに夢を見ました。夢が仮相であるにせよ、仮相の存在は否定できません。我々に必要なのはこれが夢であると認識して覚醒し、これらの法が全て仮相であることを理解し、これらの法が幻であることを証明する方法を見出せば、やがて生死を超越できるのです。
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