慢心は愚痴に由来する
無明が少ない者ほど自らの無明を知り謙虚になり、無明が多い者ほど自らの無明に気付かず驕慢となる。衆生が慢心を抱く原因は何か。無明、つまり愚痴によるのである。煩悩を断つ順序において、貪欲と瞋恚は愚痴・無明より断じやすい。貪欲が最も容易に断たれ、次いで瞋恚が断たれる。我見を断じて初禅を証得する時、先ず貪欲を断ち、修練を重ねて瞋恚を断つ。その後、一念無明が断たれる。大乗初地の菩薩に至ると、貪・瞋・慢の煩悩習気と塵沙無明の断除が始まり、塵沙無明が尽きれば仏となる。修行の各段階において、無明の程度と種類も異なる。明心前の菩薩、明心後の菩薩、入地後の菩薩、それぞれの果位は様々な愚痴と無明に対応し、九地菩薩と十地菩薩でさえ微細な愚痴の惑を残す。仏陀となり一切種智を成就する時、初めて心中の全ての無明の惑が消滅するのである。
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