(十八)原文:復次、有支を建立することに二種あり。一には勝分に就いて建立す。取に摂受せらるる業を謂う。前に説きたる如し。二には全分を建立す。業及び識、乃至受の所有の種子を謂う。取に摂受せら、有として建立せらるることを応に知るべし。
釈:有という支分を建立するには二種ある。一つは勝れたる支分の角度から三界の有を建立するもので、取に摂受される業用に属し、前に既に説かれたる如く、取は有の三種の縁なり。二つは全体的に三界の有を建立するもので、業行・六識・名色・六入・触および受の全ての種子を含む。これらの有は皆取に摂受され、後世のこれらの有を生ず。
六道輪廻は取の果報であり、三界の有の最も勝れたる支分の体現である。これが勝分に就いて有を建立する意味なり。一切の業行の業用は種子を残し、六識の造作に種子あり、名色の生住異滅に種子あり、六入処の運行に種子あり、触に種子あり、受にも種子あり。これらの種子が後世の有の出現を導き、これらの種子もまた有の範疇に属す。有あるが故にこれらの支分が生じ、これらの支分もまた有の範疇に属す。これが全分に就いて有を建立する意味なり。
原文:問う。是れ諸の有支は唯だ次第として行と縁を為し、乃至老死に至る。更に余の業用有りや。答う。即ちこの業用、及び各別の行ずる境に於いて、其の応く所に随って所有の業用有ることを応に知るべし。是れ第二の業用と名づく。
釈:問う:これらの有支は唯だ次第として行支の縁となり、乃至老死支の縁となるのみか、他の業用は無いのか。答える:行乃至老死と縁を為すこの業用、及び各々別々の運行する環境の中で、其の応じる所に従って全ての業用が存在する。全ての業用を第二の業用と称す。第一の業用は生であり、生じた後に三界の有において初めて行・識・名色乃至老死等の業用が存在し得る。
原文:問う。無明は唯だ行と縁を為すのみか、亦た余の支と縁を為すや。答う。無明は乃至老死とも縁を為す。前に言う唯だ行と縁を為すとは、但だ近き縁の義を説く。是の如き所の余も尽く応に知るべし。
釈:問う:無明はただ行支の縁となるのみか、他の支分とも縁を為すのか。答える:無明は行支と縁を為すのみならず、識・名色・六入・触・受・愛・取・有・生、乃至老死とも縁を為す。十一支は皆無明によって運転される。前に無明が行と縁を為すと言ったのは、無明に比較的近き縁を指す。後に説くこれらの縁も知るべきなり。例えば六識の運行は無明を縁として雑染の業行を造作し、名色は無明を縁として雑染の果を有し、六入は無明を縁として雑染の触を生じ、触は無明を縁として雑染の受を生じ、受は無明を縁として雑染の愛を生じ、愛は無明を縁として雑染の執取を生じ、執取は無明を縁として不可愛の有を生じ、有は無明を縁として雑染の生を生じ、生は無明を縁として不可愛の老死を生ず。
原文:復次、後の支は前の支の縁に非ず。何を以て故ぞ。後の支を断ぜんが為に、勤めて功用を作し、前の支を断ずれば、前の断ずるに由りて、後もまた随って断ず。前を断ぜんが為に勤めて功用を作し、後の支を断ずるに非ざるが故なり。是の故に応に知るべし、唯だ此れを以て彼の縁と為す。
釈:十二支の中で後の支は前の支の縁ではない。何故ならば、後の支を断除せんとするには、前の支を断ずるが故に精勤して功用を加えれば、前の支が断除され、前支が断たれる故に後支もまた随って断たれる。前支を断ずる為に後支を断ずるのではない。故に、前支が後支の縁であることを知るべきであり、後支が前支の縁ではない。
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