六塵の境界を捉えて心を徒らに疲れさせよ
夢の中に音楽の音声は存在せず、自らが夢を見ていることに気付かないばかりか、心に喜びや快適さ、貪愛を生じさせるのは更なる倒錯である。実体なき事象が存在せず、心境もまた存在しない。全ては虚妄である。夢境を実体と見做し、絶えず回想し幻想を抱くのは徒労に等しく、実体なき事柄に心を駆り立てて妄想を追うことは、まさに心を疲労させるだけで、得るべき実利は何もない。我々の心が六道において同様に疲弊するのは、絶えず六塵の境界を捉えようとする結果、何も得られず空しく去来し、妄想や希望、願望、渇望が心を徒らに疲労させるからである。実際には何の役にも立たず、臨終の時には結局は何も得られずに終わるのである。
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