(一)原文:仏は比丘たちに告げられた。太子は老いた者や病人を見て世の苦悩を知り、死者を見て世への執着が消え、沙門を見て大いに悟りを開かれた。宝車を降りる時、歩みの度に束縛から遠ざかり、真実の出家となり真の離脱を成された。その国の人々が太子が髪を剃り法衣を纏い鉢を持って出家したと聞き、皆言い合った「この道こそ真実に違いない。太子は国の栄誉を捨て重きを棄てられた」と。時に国中の八万四千人が太子のもとに赴き弟子となり出家修行を求めた。仏は偈を説かれた「深妙の法を選び聞きて出家す 恩愛の獄を離れ 衆結の縛なき」
釈:仏は比丘たちに述べられた「私は太子の時、外出先で老人や病人を見て世の苦悩を知り、死者を見て世への執着が消え、沙門を見て大悟した。宝車を降りる一歩ごとに煩悩の束縛から遠ざかり、真実の出家を成し遂げた。国民が太子が髪と髭を剃り法衣と鉢を持って出家したと聞き、『この道こそ真実だ。太子は王位を捨て重荷を棄てられた』と語り合った。そこで八万四千人が太子のもとに弟子入りし出家した」。仏は偈で説かれた「深遠な法を聞き出家し 恩愛の牢獄を離れ 一切の束縛から解かれた」
原文:太子は彼らを受け入れ共に諸国を巡り教化した。村から村へ、国から国へ、至る所で恭敬され四事の供養を受けた。菩薩は思われた「大衆と共に諸国を巡るのは騒がしく私にふさわしくない。いつかこの群衆を離れ静寂の地で真実の道を得たい」と。まもなく静寂の地を得て専心修行に励んだ。また思われた「衆生は憐れむべきだ。常に闇にあり危うき身を受け、生老病死の苦に満ち、生死を流転し苦の連鎖から脱せない。私はいつ苦の根源を悟り生老病死を滅ぼせるか」
釈:太子は弟子たちを受け入れ各地を巡り教化した。村から村、国から国へ移動する度に人々は恭敬し四事を供養した。菩薩は思われた「大勢で諸国を巡るのは煩わしい。人里離れた静寂の地で真実の道を求めたい」と。やがて静かな場所を見つけ修行に専念した。さらに思われた「衆生は哀れだ。常に無明にあり脆い身を受け、生老病死の苦に苛まれ、生死を繰り返し苦の連鎖から抜け出せない。私はいつこの苦の根源を断ち生老病死を滅ぼせるか」
世尊のこの叙述から、諸仏菩薩が修行過程で最初は人里離れた静寂の地で独り修行し、人々の喧騒から離れ、成就後に教化活動を始めたことが分かる。道は寂静の中に得られ、寂静は智慧を生み三昧を得る。故に修行で成果を得た者たちは皆、世俗の煩悩や喧騒から離れ、名声や利益を捨て、心清浄になって初めて道に入るのである。
0
+1