諸法から離れられない原因
なぜ我々は諸法から遠く離れられないのでしょうか。貪愛と執着があるからです。愛楽心が存在するため、心が一切の法に住着し分離できないのです。世間の一切の法を所有占有したいという欲求、これが愛楽心です。もし愛楽心がなければ、心は何ものにも執着せず、所有占有を望まなくなります。そうすれば心は一切の法に束縛されず、解脱の力を得て自在となるでしょう。欲界に愛楽を生じない者には初禅定が現れ、初禅の境界を愛さない者には更に高い禅定が現れ、さらに高い禅定境界をも愛さない者には三界の最高境界に至ります。三界世間の法を一切愛さない者は滅尽定に入り、これが四果阿羅漢の境界です。命終すれば前七識が滅し、色身が滅し、五陰が滅して無余涅槃に入り、三界の生死を解脱し輪廻を離れます。
阿羅漢が無余涅槃に入り生死を超越できるのは、三界世間法への愛楽心行が消失したからです。我々が三界で苦しむ理由、特に欲界で苦を受ける理由は、欲界天ではなく人間界に生まれることからも明らかです。これは欲界法への愛楽心が天人より深く、色界天人より深く、無色界天人とは比較にならぬほど強いためです。愛楽心が薄ければ薄いほど命終時に生まれる天界は高くなり、生命はより安楽で寂静となり苦受は減少します。反対に愛楽心が強ければ苦も増大します。もし愛楽心がなければ一切の諸法から遠く離れ、心は清浄寂止を得るのです。
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