浄飯王が仏法の稀有さを讃嘆
原文:その時、浄飯王は諸々の従者眷属らと共に、阿修羅王はもとより、外道の婆羅門までもが仏より授記を受けるのを見て、希有の心を発し、未だ曾て有らざることを嘆じた。世尊の説法の音声は美妙にして清澈、一切世間の聞く者皆歓喜せしめた。時に浄飯王は初めて如来を見るや、愛執の故に情意殷勤たり。
時に世尊は父王の心の念う所を知りて告げたまわく「大王よ、我の説く法は初めより中ほど、終わりに至るまで善く、その義理は巧妙なり。清浄一相にして梵行円満せり。今正に説かんとするは、所謂六界の差別分位を分別する法門なり。王よ、諦聴し善く思念せよ」時に浄飯王は即ち仏に白して言う「善き哉、世尊よ。願わくは楽しみて聞かんことを欲す。我が為に宣説し、憶持信受せん」
釈:浄飯王とその眷属、側近の大臣らはこの法会において、世尊が阿修羅王はもとより外道の婆羅門にまで授記を下さるのを見て、希有の心を起こし「このような殊勝な法会は未だ遭遇したことがない」と讃嘆した。世尊の説法の音声は実に美妙で清澈、一切の世間人が聞いて歓喜した。浄飯王は如来と再会したばかりで、未だかつての我が子への愛執が心に残り、情愛の念が厚かった。
この時世尊は向かいの父王の心中に渦巻く思慕の情を知り、浄飯王に告げた「大王よ、私の説く法は初めから中程、終わりに至るまでその義理は善く、巧妙で様々な譬喩をもって衆生を導き、清浄の相を具え梵行は円満です。今まさに説かんとするは六界の差別分位を分別する法門。大王は謹んで聴聞し、善く法義を思惟すべきです」浄飯王は即ち世尊に申し上げた「素晴らしいことです、世尊よ。心からお聞きしたい。私のために説き示し給え。謹んで記憶し信受いたします」
この法会において、欲界六天・色界十八天・無色界四天の合わせて二十八天の天主たち、及び非人たちことごとく仏の授記を得た。浄飯王はこれほどの人々や非人、はては外道にまで授記を下される様を見て、未だ耳にしたことも目にしたこともない光景に、稀有難遇を讃嘆したのである。
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