父子合集経の縁起
六界とは地水火風空識の六大を指し、差別とは各々の界が独自の境界を有し、その機能性に一定の差異があることを意味する。父子合集経は主に、釈迦仏の父である浄飯王が世尊に教化された物語を説く。釈迦仏が初めて成道した際、父を教化せんと欲し、使者を遣わして浄飯王に釈迦仏への謁見を勧めさせた。浄飯王が世尊に拝謁した時、無数の人天に授記を与えて仏と成らしめ給う御姿を目撃し、深く感動を受けた。仏はこの機に乗じ、浄飯王に王位や世間の五欲六塵に執着せず仏法を精進すべきことを諭された。仏は夢中の様々な境界を譬えとして諸法の虚妄性を説き、もって五欲六塵が夢幻の如く実体なきことを悟らしめんとされた。浄飯王はこの理を解した後、五欲六塵への執着を捨て、心を翻して仏法を修学し、命終して極楽浄土に往生を遂げた。浄飯王が王位に在りながら五欲六塵に貪着せざりしは極めて稀有なること、これ皆仏の善巧方便による教化の結果なり。
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