各道の衆生における勝義根の区別

人界の衆生には勝義根があり、畜生界の衆生にも勝義根が存在します。畜生の色身は人間の色身と同様、実四大種子によって構成された肉体であり、大脳を有し、勝義根を具えています。勝義根に病変が生じれば、畜生も精神分裂や狂乱状態に陥ります。畜生の勝義根は業障の関係で人間よりも劣っており、物事を認識する際に大きな錯覚を抱き、法を如実に見ることができません。しかし各種の畜生にはそれぞれの種族に特有の長所があり、例えば視覚が鋭く暗視能力を有するもの、聴覚が優れたもの、嗅覚や味覚、触覚に長けたものなどがおります。ただし畜生全般として、意識の思考力は乏しく、論理分析能力に至ってはほぼ存在せず、多くは意根の直観力に依存しているため、比較的単純な性質を示します。空腹を満たし生存を図るための殺生業を除けば、他の悪業を計画的に造作するような心の働きはほとんどなく、純粋に報いを受ける存在と言えます。

無色界の四空天衆生はその生存環境が無色であるため、色法五塵が存在せず、色身も有しません。従って勝義根もなければ内五塵・内法塵もなく、五識も存在しません。ただし意識・意根・第八識は具わっています。彼らの第八識と意根は永遠に滅びることなく存在し、意識もまた永劫不滅です。その意識が了別するのは定中の独影境であり、外法塵がなく独影境のみを対境とします。仮に意識が滅した場合、第八識と意根のみが残る状態は滅尽定の境界に属します。よって無色界天人の意識も永遠に滅びることなく、昼夜の区別なく睡眠や休息を要せず、常に禅定の中にあって独影境に対面し続けるのです。