盗とは、与えられないものを取ることであり、物主の同意を得ずに密かに相手の所有物を取ること、あるいは公然と取り込んで自己のものとすること、もしくは策略を用いて物を騙し取ること、あるいは言動で脅迫して物主に与えざるを得なくさせることを指す。窃盗は盗みの中でも行為が比較的軽微なものであり、重いものは奪取・強奪・強盗であり、その中でも公然と奪い取る行為は密かに奪う行為よりも横暴で罪業が重い。要するに、物主の同意を得ず、一定の手段・方法・途方を用いて、本来自己のものではない一切の法を自己のものとすること、これを盗みと名付ける。
また、物主が何らかの理由で同意せざるを得ず、しぶしぶ同意した場合、あるいは表面的には同意しても内心では同意していない場合も盗みに該当する。この同意とは心からの同意を指し、脅迫による口頭の同意を指すものではない。もちろん、盗まれる側が故意に口頭では同意しながら内心では同意しない場合は盗みには該当せず、自分が騙された・設計されたことになる。
いわゆる窃盗とは、与えられざるものを取る(不与取)ことである。他人が進んで与えるものではなく、同意していないものを自ら取り去って占用することを「不与取」と言う。しかしここに重要な点があり、時として、ある者は体面を気にして表面的には同意・承諾しても、内心の意根は同意しておらず、ただ渋々同意している場合がある。このような状況で彼の物を使用したり、彼の資源を占用したり、彼の物を持ち去ったりする行為は、厳密には全て窃盗の範疇に属する。他人が自発的に与え、心から与えたものを取得することは合理的かつ正当である。偽りの与え方、強制された与え方、情や圧迫に迫られての与え方は、自発的な与え行為ではなく、取得した場合は実質的に不与取となる。
強要されて仕方なく行う行為は、一般に強奪に該当し、時として軽んじて取る行為(軽慢取)の場合もある。この「強」とは一般に、勢力・権力・体面・コネなどを用いて、相手に同意せざるを得ない状況を作り出し、実際には同意していない(内心で不平や不満を抱いている)場合を指す。このような状況で物を持ち去ったり資源を占用したりすることは窃盗に該当する。例えば、甲が乙に「今夜君の家で食事をし、二人で酒を酌み交わそう」と告げたとする。乙は忙しく甲と食事・酒を共にする時間はないが、義理で同意せざるを得ず、内心では泣き言を言っている。甲が食事を終えた時点で、それは窃盗に等しく、乙の食糧と酒、さらに時間を盗んだことになる。甲は自分が無理に食事・酒をし、乙の時間を強制的に占用したことが窃盗に該当することを知らない。
別の例では、甲が頻繁に乙の所で食事・お茶・雑談をするが、一度も食事代や茶代を支払ったことがなく、乙の一方的な負担となっている。乙は内心不本意だが仕方がない。このような不本意な負担は、甲に窃盗罪を犯させている。
甲が乙を食事に招待したところ、乙が甲の同意を得ずに無断で丙を連れて行った場合、この食事が終わった後、丙の食事代はどう清算されるべきか。実質的には不与取に該当する。主人の同意を得ずに無断で訪問し雑談して主人の貴重な時間を占用し、主人の大事な用事を遅らせた場合、この状況は主人の時間を盗用しただけでなく、主人に用事を達成させず損失を与えており、これらの損失は債務となる。主人が訪問を同意しているのに、無断でさらに二人を連れて行く行為も盗みと見なされ、盗まれた内容は時間に加え主人の権限(決定権)となる。
また、事に際して他人に代わって決定を下し、他人の同意・不満に関わらず他人のことを自分が決めてしまう行為は、他人の自主権を盗用している。どれほどの損失を与えたかが、そのまま盗んだ物の量となる。部下が上司に代わって決定を下す、子供が親に代わって決定を下す、弟子が師匠に代わって決定を下すなどは全て窃盗行為に該当し、損失の大きさが盗んだ物の量となり、さらに「権限の盗用」が加わる。
全ての人は懺悔を必要とする。強者は盗みを犯しやすい。人と付き合う際は、決して他人を強要せず、他人を困らせてはならない。他人が心から喜んで同意した場合にのみ行い、他人の意志に背いたり自主権を剥奪したりしてはならない。外国では人権を重んじ、自己と他者の基本的権利を守るため、多くの事柄でまず他人の同意を求め、非常に礼儀正しい。一方、我々中国人はこれを重んじず、情けとメンツ(人情世故)を重視し、互いに遠慮がなく距離感や境界感覚がなく、知らず知らずのうちに他人を侵害し、内心に疚しさを感じない。これらは全て人としての徳の問題に属する。徳のある人は常に他人の心理・感情・感覚、そして様々な権利を尊重し、決して侵害・冒涜しない。
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