悟りとはどのような境地か

『般若心経』の最初の言葉にはこうある：観自在菩薩が深甚なる般若波羅蜜多を行じた時、五蘊皆空なるを照見し、一切の苦厄を度したまえり。深甚なる般若波羅蜜多を行じ、五蘊皆空なるを照見するとは、般若智慧を具えた如来蔵を証得した瞬間、心が空となることを意味する。ここで重要な「行」の字は、禅によって般若の義理を参究することを指し、「深」とは禅定の深さと、参究する智慧の深遠さ、方向性の明瞭さを表す。この深甚なる条件の下で、第六・七識が大智慧を生じ、法界の実相を智慧で照らし、五蘊中の一切の法界が般若心如来蔵によって現起され、五蘊の実体が空であり仮相幻化の相であることを証得する。

かくして心の深層は真実の五蘊なきを知り、苦もまた存在せず、一瞬にして一切の苦厄を超越する。全ての苦厄は如来蔵が幻化した仮相に過ぎず、真実ではない。この五蘊皆空を照見すれば、心は空無為となり煩悩は断たれる。これが大乗見道による如来蔵証得の功徳受用であり、意根の見道、意根による如来蔵三昧境界の証得である。定慧を具足し定慧等持する。ここでいう「照見」とは頓悟を意味し、中間の思索分析による漸進的理解を要せず、知れば即ち知り、不知は即ち不知なり。躊躇や曖昧さは存在しない。

かくの如く五蘊皆空を照見した後、改めて如来蔵に転依する必要があろうか。全く必要ない。これこそ真実不謬の証悟頓悟であり、漸次的な解悟ではない。既に大乗の門に入り、真実の功徳受用を得たのである。もし意識で推理推量して如来蔵を想定するなら、その推量には何らの功徳もなく、転依を要するが、意根が証得せぬ限り転依は成就せず、煩悩は依然として残り無明は解けぬ。

定を以て禅とする者たちは、一念不生の禅定を修め、これを真如の無念境界と錯覚する。妄りを真と認めるが、出定すれば妄念再び現れる。真心の消失を恐れ不断に修定し、定境を保とうとする。これを保任と称するが、定境は終に消滅する。たとえ無量劫にわたり出定せずとも、定境は真如自性ではない。真に悟れば保任など不要である。真如を証得すれば転依など要しない。当体即ちそれなり。心は即座に空寂清浘となる。鯉が龍門を跳び龍となるや、再び鯉に戻ることを恐れようか。龍門を跳び越えぬ者が、初めて保任や転依を必要とするのである。