識心の認識がどのような境地に達すれば、智と呼べるのでしょうか

識心が法に対する認識には程度の差があり、煩悩の障りが深刻な認知は往々にして邪見です。煩悩の障りがやや軽い場合、認知が正しいこともありますが、それはあくまで従来の誤った認識に比べてのことで、完全な正しさではありません。その知見は正しい方向へ若干修正されたに過ぎず、識心に多少の慧力が生じたものの、まだ智とは言えません。智とは煩悩の障りが除かれた後の正しい認知であり、煩悩の障りがないため識心の認識に煩悩性や染汚性がなく、清浄性が明らかに顕現します。造作するのはすべて善業と清浄の業であり、悪業を造ることはありません。この時の智はほとんど誤謬がなく、あるいは極めて稀にしか誤謬が生じないため、信頼に値するものです。これを初めて智と呼ぶのです。

仏陀が涅槃に入られる際、後世の衆生に「智に依りて識に依らず」と遺訓されました。この智とは普通の智慧の智ではなく、初めて証果を得たり明心した後に生じる無生忍の智でもなく、煩悩の障りのない無生法忍の智であり、識を転じて智となった後の智、道種智の智を指します。証果や明心を初めて得た段階では、智慧は凡夫より深まっているものの、煩悩の障りが残っているため智慧はまだ浅薄で、心の染汚も明らかです。時に煩悩によって悪業を造ることもあり、これは智とは言えません。よって法に対する認識は慧と呼ぶべきで、智とは称し得ません。結果に違害作用があるものはすべて不智であり、智とは呼べません。結果がすべて善である行為こそが明智の挙であり、初めて智と呼び得、依り所とすべきものです。

凡夫の心識が思惟するものはすべて識性に属します。煩悩の慣性に依って生じる分別と抉択作用はすべて識性に属し、智はありません。証果や明心を得ても煩悩を断じていない賢者の思惟には一定の智慧が生じ、識心の慧力が増したものを慧と呼びますが、まだ智ではなく、大凡は識性の範疇に属し、完全に依り所とすることはできません。故に多くの人々は法を学びさえすれば自らを殊勝で超勝だと考えるものですが、これらはすべて識性の認知範囲に属し、誤った要素が依然として大部分を占めています。自意を過信すべきではなく、このような自信はほぼ誤信であり、慢心から生じた結果です。多くの人が自覚している「不疑」も真の不疑ではなく、智慧が不足している時には疑いがあっても自照できず、自らが事実と思うものも往々にして事実ではなく、判断を誤っているに過ぎません。