問:ある科学者が本を読むことに非常に集中し、熱心に取り組んでいたため、饅頭に墨をつけて食べても気づかなかったそうです。彼の意識は全て本に集中しており、この時、彼に舌識はあったのでしょうか?舌識があれば、墨が美味しくないと分かるはずですが、なぜ気づかなかったのですか?
答:物を食べる際には必ず舌識が関与しており、意識のみで食物を味わうことはできません。読書に没頭している時、饅頭に墨をつけて食べても気づかないという状況は、意識が読書に集中しており、何を食べているかに注意を払っていないためです。識別は存在しますが、比較的曖昧な状態です。舌識は存在しており、依然として食物を識別していますが、それは食物の粗い相(あらわな特徴)を識別するのみで、細かい相(詳細な特徴)、例えばどのような種類の食物か、具体的な味や食感などは意識心が識別するものです。舌識はそれほど細かく識別することはできません。意識心が読書に集中している状態では、舌識も細かく識別できないため、例の科学者は墨を食べても気づかず、自覚しなかったのです。この事例からも、修行者は世俗的な楽しみに注意を向けさえしなければ、世間法への執着を減らすことができるということが証明できます。
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