功徳を積むことと減らすことの理

道を修めるための福は、衆生にとって常に不足しています。ですから、絶えず福を修め造りながら、同時に福を節約する必要があります。福は瞬く間に消え去り、享受すればすぐに滅びます。自らを誇り他人を滅ぼすこと、あるいは他人の称賛を得ることで福は消化され、悪業を造れば、瞋恚・嫉妬・誹謗・両舌・悪口によって福は消失します。もちろん善業を行えば福は増え、他者や団体に利益を与えれば福が増加し、自らの道徳的品格を高め心を善良に保てば福が増えます。禅定は福徳を増し、多聞は福徳を増し、持戒は福徳を増し、忍辱は福徳を増します。もちろん様々な布施行も福徳を大きく増やすことができます。布施を多く行うことを好む人もいますが、本来福が少なくないのに、何の福も感じられず何事も順調に進まないのはなぜでしょうか。実はこのような人は煩悩が重く、悪業を造る習慣があり、常に怒りを起こし瞋心を抱き、他人を嫉妬し、仕事では常に人を排斥し、勝ち負けにこだわります。勝負に執着する人は福徳を積みにくく、むしろ福徳を消耗し、他人を嫉妬し排斥することで他者の利益を損ない、当然ながら自らの福徳を減らす行為ばかり行っているのです。

心善・口善・身善は福を積む道です。逆に、煩悩の習気が重く、心が狭く、口が不善で好き勝手に是非を言い、身が不善で悪行を造り、心が不善で自己利益のみを求めることは、福を消す行いです。煩悩は「漏」とも呼ばれ、この漏れがあると善業を集め難く、福も積み難くなります。少しの福も煩悩によって漏れ出てしまうため、福は常に不足し、些細なことで問題が起き、心が安らかでなく道も堅固ではありません。人は病苦に遭ったり困難や災難に直面すると、それを自然に発生したものと考え、誰にでも起こり得ると慣れきってしまい、なぜ病痛や挫折といった様々な不如意が生じるかを反省せず、従って教訓を学んで自らを変えることができません。その結果、苦悩は常に付き纏い、何事も順調に進まないのです。