第二の月とは何ですか

『円覚経』原文：善男子よ。一切の衆生は。無始よりこのかた。種種の顛倒あり。あたかも方向を見失える者の如く。四方の位置を誤り。妄りに四大を認めて。自己の身相と為し。六塵の縁影を。自らの心相と為す。例えるならば病める目が虚空に華を見、第二の月を見るが如し。 

釈：仏は説かれた。善男子よ、一切の衆生は無始劫よりこのかた、心中に常に種々の顛倒した知見と想念を抱いておる。それはあたかも方角を見失った者が四方八方を彷徨い、絶えず帰属を求めるが如し。智慧を持たぬが故に、根拠なく四大より成る色身を自己と見做し、縁起する六塵の影像を自心の相貌と認めておる。四大色身こそ我であり、六塵影像こそ自心の相であると確信し疑わず、固執して放さず、無始劫より生死の河に沈み解脱を得られない。衆生の顛倒した心がこれらの虚妄の相を見る様は、まさに病眼が空中の華や第二月を見る如し。病眼の見る第二月は本来存在せず、ただ第一月たる真月あるのみ。顛倒した衆生の見る一切の法もまた実在せず、ただ自心の真如あるのみ。いつになったら衆生は病癒えて顛倒を止め、妄相を認めずただ真心の相を見るのであろうか。