瑜伽師地論 第十巻（十二因縁）

（三）原文：蘊得とは何か。すなわち生起する位において五取蘊が転ずることをいう。界得とは何か。すなわちそれら諸蘊の因縁によって摂取される性質をいう。処得とは何か。すなわちそれら諸蘊の他の縁によって摂取される性質をいう。諸蘊の生起とは何か。すなわちそれら諸蘊が日々の飲食によって資養され命根が長養されることをいう。出現とは何か。すなわちそれら諸蘊の残された寿力によって相続して住することをいう。この生支の略義は、生の自性、生の処位、所生、因縁によって摂取されるもの、任持によって引き出されるもの、倶生の依持、これらを略義という。

釈：蘊得とは一切の生位において色受想行識の五取蘊が転動することを指す。界得とは五取蘊の因縁によって摂受される属性、例えば根には根の属性、塵には塵の属性、識には識の属性があることを指す。処得とは五取蘊の他の因縁によって摂受される属性、内六入処・外六入処、根塵相触する処を指す。五取蘊の生起とは五取蘊が日々飲食によって命を維持し命根を養い滅びないことをいう。出現とは生命体が生まれた後、五取蘊の残された寿力の因縁によって生命体が相続して世に住することをいう。この十二因縁中の生支の大略は、生の自性、生の段位、生まれるべきもの、因縁に摂持されるもの、任運に執持される法、生来依持する法を指す。

原文：衰とは何か。依止するものが劣るが故に掉動を生ずることをいう。老とは何か。髪色が衰変することをいう。摂とは何か。皮膚が緩み皺が寄ることをいう。熟とは何か。火力が衰退し欲塵を受用する勢力を失うことをいう。気力損壊とは何か。病が多いが故に事業をなす勢力を失うことをいう。黯黒が身に間するとは何か。黯黒が現れ容色を損なうことをいう。身の脊柱が曲がり喘息が急なるとは何か。歩行の威儀において身形に現れ、これによって極めて重い喘咳を生ずることをいう。形貌が前かがみとなるとは何か。坐する威儀の位において身首が低く曲がることをいう。杖に憑り据わるとは何か。住する威儀の位において杖の力によって住することをいう。

釈：衰とは依止する法が劣弱なため自身が掉動することを指す。老とは膚髪の相貌が衰変することを指す。摂とは皮膚に次第に皺が生じることを指す。熟とは色身中の火力が衰退し五欲六塵を受用する精力を失うことを指す。気力損壊とは病が多く事業をなす力がないことを指す。黯黒が身に間するとは身体に黯黒が現れ容色を損なうことをいう。身の脊柱が曲がり喘息が急なるとは威儀を失った身形から重い喘咳が生ずる現象を指す。形貌が前かがみとなるとは坐す威儀において身体が低く曲がる状態をいう。杖に憑り据わるとは威儀を保ちつつ杖によって立つことを指す。