目の前五メートル先に鉢植えがある。この距離は何境か。真実か。何を根拠に五メートルの距離と判断するのか。鉢植えは後頭部のもの、自身の身体も後頭部のもの、元より距離という概念は存在せず、全ては帯質境である。中間の空間は後頭部が顕現させたもの。そして意識がこの三者に基づき、五メートルの距離を判断する。色法に基づき空法を顕現させ、さらに空法を判断するのである。
しかし実際には三者とも後頭部内に存在し、隔たりも距離もない。意識が判断して導いた結論は、亀の毛や兎の角の如く、影さえ掴むことができない。後頭部内の距離を、いかにして判断するというのか。そもそも距離も空間も存在しない。距離を判断するには基準物が必要だが、その基準物は仮の幻影、距離はさらに偽りと幻想に過ぎない。
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