例えば国家を例に取れば、ただ一人の人間だけでは国とは呼べません。一人が国でないならば、多数の人々も国ではなく、十億人であっても国ではありません。国はどこにあるのでしょうか。これは仮名なのです。ゆえに一切の法は皆仮名であり、実体を有しません。真如を除いて。
同様に、頭一つでは人とは呼べず、腕一本では人とは呼べず、脚一本でも人とは呼べません。それらを組み合わせても、依然として人とは呼べません。人は何ものか?人は存在せず!これも仮名であり、実体を有しません。一切の法は皆仮名であり、実体を有せず、真如を除いて。
ある特定の人物とは何でしょうか。その人物は存在せず、頭脳や脊髄もその人物ではなく、手足もその人物ではなく、思想や覚知、観念や感覚もその人物ではありません。それらを総合してもなおその人物ではなく、しかしこの法を離れてその人物を見ることはできません。もし人がその人物を罵ったとして、本当にその人物を罵れるでしょうか。できません!もし人がその人物を打ったとして、本当にその人物を打てるでしょうか。これもできません!その人物は空であり、打つことも罵ることも全て空なのです。その人物も事象も実在しません。
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