金剛経唯識深義（二十一）

仏が説くべきであるとされる七つの妄心を如何にして降伏させるか。世尊は説かれた、全ての衆生の類、即ち卵生、胎生、湿生、化生、有色、無色、有想、無想、非有想非無想のすべてを、我は皆無余涅槃に入らしめて滅度せしむ、かくの如く無量無数無辺の衆生を滅度すれども、実に滅度を得る衆生は存在しないと。三界の衆生は四生九有二十五種に分類される。卵生とは有情衆生が母胎に住まず、父母を由とせず、意根が阿頼耶識を帯びて直接卵殻に入り、外縁の温度等の条件が具足すれば胚胎が成長し、殻を破って出るものを指す、鶏や鴨、蛇や鳥などがこれに当たる。胎生とは衆生が中陰において意根が阿頼耶識を帯びて母胎に投じ、六根が生長成熟して母胎を出るものを指す。

胎生には全ての人類、大部分の畜生、一部の鬼類、一部の阿修羅を含む。湿生とは一定の温度湿度条件（水辺や海辺の湿った土壌や空気中など）において生じる福徳のない衆生を指し、各種昆虫や細菌、一部の阿修羅などがこれに当たる。化生とは変化によって生じるものを指し、各層天界の天人、他国土の衆生、鬼神類の非人類衆生、地獄の衆生、一部の阿修羅類及び少数の畜生類、神通力を有する菩薩や羅漢などが含まれる。有色衆生とは色身を有する欲界・色界の衆生を指す。色身は色陰とも呼ばれ、投胎から受精卵を経て出生し最終的に滅する形体をいう。阿頼耶識と前七識が色身に住持することによって、色身は様々な身口意行の行為造作をなす。これを色陰と呼び、これなきものは死屍及び無情物、例えば植物類や鉱物類である。