ブラックボックスの世界（三十四）

あらゆる法に触れているかのようでございます。次々と風景を眺め、一種類また一種類の音声を聞き、一種類また一種類の花香りや空気中に漂う様々な香りを嗅ぎ、一筋また一筋の陽光を感じ、一瞬また一瞬の微風のそよぎを覚えるのでございます。種々の境界が次々と変化してやみませんが、実のところ如何に変化しようとも、千変万化するものは全て黒匣子（ブラックボックス）の中の映像に過ぎないのでございます。

外界の相対的に実在する境界に変化は生じたのでございましょうか。外界の境界もまた絶え間なく変化し続けております。次々と色塵が現れ、次々と音声が生起し、次々と香気が鼻をくすぐります。外境界が絶えず変化するが故に、内境界もまたそれに従って転変し、六識は絶えず接触し、了別し、感受せざるを得ないのでございます。六識が識別し了別するものは、これらの二次的に顕現された境界に他なりません。故に申し上げまするに、黒匣子の中の内映像は外界のあたかも真実なる相に依拠しており、外相分なくして内相分は存在しないのでございます。

外相分の情景は必ず変化を遂げますが、ただ我々の身根たる五根が縁じ得るか否かでございます。例えば某所に確かに外色塵としての山が存在する場合、我々の眼根はそもそもその山に接することができず、その山と実際に接触することも叶わず、またその山が眼根の中に到来することもありません。それにも拘わらず我々はその山を見ることができるということは、実に奇妙なことでございます。

同様に、遠方の某所で響き渡る声塵、例えば雷鳴や鳥の声は、耳根に接近することなくして明瞭に聞こえるということもまた奇妙でございます。忉利天の頂に懸かる円満なる太陽は、我々の身体からはるか遠方にありながら、身根は常に太陽の光輝に照らされることを覚え、実に不可思議でございます。遠く離れた栴檀香も、鼻根との距離は測り知れぬほど遠くとも、鼻識は変わらず栴檀の香気を嗅ぎ分けることができます。これもまた不可思議でございます。五根が実際の外五塵と接触していないにも拘わらず、五識が五塵を了別し得るこれらの事実は何を物語るのでございましょうか。これこそ我々の六識が接触し了別するものは全て、如来蔵が外五塵に基づいて顕現した内五塵であり、外五塵の映像に過ぎず、黒匣子の中の影であって真実の境界相ではなく、如来蔵が二次的に幻出した仮相であることを示しているのでございます。