第一節 殺戒第一
(九)原文:若し優婆塞が特定の一事の為に坑を作らず、来る者全てを堕死せしめる場合、人死すれば、不可悔を犯す。人ならざる者死すれば、中罪可悔。畜生の死するは、下罪可悔。全く死なざれば、三方便の可悔罪を犯す。是れを無煙火坑殺と名づく。
釈:優婆塞が特定の衆生を対象とせず無煙火坑を設置し、火坑に来る全ての者を殺そうと意図した場合、人間が死ねば悔い改められない殺罪を犯し、非人が死ねば中程度の悔い改め可能な罪、畜生が死ねば軽い悔い改め可能な罪となる。全く死者が出ない場合、三方便の悔い改め可能な罪を犯す。これが無煙火坑による殺生の事例である。
火坑を設置する意図が通りかかる一切の衆生(人間を含む)を殺すことにあった場合、人間殺害の意思があって人が死ねば最重の不可悔罪となり、非人や畜生を殺す意図でそれらが死ねば中罪・下罪となる。三方便とは三種の衆生を殺す為に無煙火坑を設置したことを指す。
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