瑜伽師地論第三十四巻
四聖諦十六行を修習することにより、四聖諦の相を明らかにすることができる。無常・苦・空・無我の四行によって苦諦の相を明らかにし、因・集・起・縁の四行によって集諦の相を明らかにし、滅・静・妙・離の四行によって滅諦の相を明らかにし、道・如・行・出の四行によって道諦の相を明らかにする。既に十種の行によって苦諦を観察し苦諦の四行を悟入することは述べ終えた。次に如何にして集諦の四行を修習し集諦の相を明らかにするかを説く。
原文:復た四行によって苦諦の相を正しく覚了し終わりて後、次にまたこの苦諦を観察す。何が因ぞ、何が集ぞ、何が起きん、何が縁ぞ。それらを断ずることによって苦もまた随って断たる。かくの如く即ち集諦の四行を以て集諦の相を了知す。愛が苦を引き起こす故に因と名づけ、既に苦を引き起こした後また招き集めて生ぜしむる故に集と名づけ、既に苦を生じた後それらを起こす故に起と名づけ、また将来の諸苦の種子を摂受する故に次第に諸苦を招き集むる故に縁と名づくと言う。
釈:苦・空・無常・無我の四行によって苦諦の相を如実に誤りなく覚悟した後、再びこれらの苦諦が現れる因は何か、如何に集積されたか、如何に生起したか、何を縁として現れたかを観察する。この四行を断ずれば苦もまた随って断たれる。故に集諦の四行を観察して集諦の相を断ずるのである。
集諦の因は愛である。愛がある故に取が生じ、取得するもしないも苦相を有し、後世の有が生じ、生相が現れれば苦相が現れる。苦の根源である貪愛を断じて初めて苦を断ずることができる。愛の因は受であり、受の因は触である。触と受があっても、触れ受ける際に貪愛がなく、触受に心を留めなければ後世の苦は現れず、集諦は滅する。今の愛が苦を引き起こす因であり、愛の集起が苦を生じさせ、愛集は即ち苦集である。苦が生じた後、苦受が現起することを苦起という。愛が未来の苦の種子を摂受し、愛が招集するものは全て苦の種子であり、未来の苦を生じさせ、愛・取・有・生・老が次第に諸苦を招集する故に、愛は苦の縁である。
集諦は十二因縁の一環を成し、解脱の道において声聞法と縁覚法は互いに包含し合い、共通点を有する。独立した縁覚法もなく、独立した声聞法もない。ただ二つの法が関わる次元の深浅に差があるのみで、解脱に違いはない。
原文:また差別あり。愛が取の因であることを了知し、また能く招集し、即ちその取を因として有と為し、また能く生起して有を上首とし、当来の生を為し、また能く生を縁として老病死等の諸苦法を引き起こす故に、その応ずる所に随って因・集・起・縁の四行と名づくことを知るべきなり。
釈:四行の間には差別があり次第が異なる。愛が取の因であることを了知し、愛がさらに招集を続け、取が後世の有の因となり、後世の有を生起させ、有を縁として後世の五蘊が生じ、生を縁とする老病死等の諸大苦聚を引き起こす。四行の次第に従い、それぞれ因・集・起・縁と説かれる。
原文:また差別あり。煩悩随眠が愛随眠等に附属し所依とすることを正しく了知すれば、これが当来世の後有生因である。また彼の生ずる纏がその応ずる所に随って集起の縁であることを正しく了知す。後有愛は能く招引する故に即ちその集たり、この後有愛はまた喜貪と倶に行う愛を発起し、この喜貪倶行愛はまた多種多様の彼彼喜愛を縁とする。かくの如く愛随眠等及び三種の纏を依止して能く後有を生じ、能く諸愛の差別を発起する。故に因・集・起・縁と名づく。かくの如く行者は四行によって集諦の相を了知す。
釈:四行には更に差別がある。煩悩随眠が愛随眠に附属し、愛随眠に依止して初めて煩悩随眠があることを正しく如実に了知する。愛なくして煩悩なし。愛もまた煩悩の因であり、愛を断ずれば即ち煩悩を断ずる。而して愛随眠は未来世の有が生ずる因である。愛随眠の生ずる煩悩纏縛を正しく了知すれば、それら一一に応じるものは集・起・縁の三行である。煩悩纏縛は苦の種子を集起し、苦の現行を生じさせ、苦受を生ずる縁となる。
煩悩随眠が後有の愛を招引する故に、煩悩随眠は後有の愛を集め、また喜と貪を倶にする愛を発起する。この喜貪倶行愛は様々な喜愛の縁となる。かくの如く愛随眠等及び三種の纏縛を依止すれば、後世の有を生じ、諸愛の差別相を発起する。故に因・集・起・縁の四行と説く。愛随眠あれば必ず煩悩纏縛・喜纏縛・貪纏縛の三種の纏縛があり、後世の有は必ず生じ、苦は生ずる。かくして行者は四行によって集諦の相を明らかにするのである。
回向文:当ネットプラットフォームにおける全ての弘法と共修の功徳を以て、法界の一切衆生に回向し、世界の民衆に回向す。世界の平和を祈願し、戦争起こらず、烽火興らず、干戈永く止み、一切の災難尽く消退せんことを。各国人民の団結相助け、慈心相向かんことを祈願し、風雨時に順い国泰民安ならんことを。一切衆生が因果を深く信じ、慈心をもって殺生を断ち、善縁を広く結び、善業を広く修め、仏を信じ仏を学び善根を増長し、苦を知り集を断ち滅を慕い道を修め、悪趣の門を閉ざし涅槃の路を開かんことを。仏教の永き興隆と正法の永住を祈り、三界の火宅を変じて極楽の蓮邦とならしめんことを。
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