聞慧の特徴と修習過程

俱舎論疏第二十三巻　唐　法宝撰

原文：雑縁法念住には総じて四種あり。二・三・四・五蘊を境とする別れあるが故に。唯だ総じて五蘊を縁とするを此の修する所と名づく。彼は此の中に居りて四行相を修す。一切の身・受・心・法を総観する。所謂ち非常・苦・空・非我なり。然れども此の念住を修習する時に、余の善根有りて能く方便と為る。彼は応に次第に修して現前せしむべし。謂く彼は已に熟修し、雑縁法念住するなり。

釈：四念住中の法念住を修習する際には、更に交わり観じて身念住・受念住・心念住を修し、単に法念住を縁とするのみならず、更に其の余の三念住を交えて縁る。法念住の修習が対応する受・想・行・識蘊の四種の境界は各々異なるが故に、総じて色・受・想・行・識の五蘊を縁として法念住を観修する。行者が心に法念住を縁じ、其中において四種の行相：苦・空・無常・無我を修習し、総体的に身・受・心・法の苦・空・無常・無我を観行する。而して法念住を修習する時、其の他に暖・頂・忍・世第一法の如き善根有りて、修したる結果を方便的に検証し得る。行者は次第に修習し、四種の善根を一一現前せしむべし。此の四種の善根が現前する時、即ち行者が已に熟練して雑縁法念住を修習したることを示す。

原文：将に此の念住を修習せんと欲する時。先ず応に総縁して無我行を修すべし。次に生滅を観じ。次に縁起を観ず。観行者は先ず諸行を観じて、因より生滅することを観ずれば、便ち因果相属の観門に於いて、易く趣入するを得るが故なり。或いは先ず縁起を観ぜしめんと欲する有り。此の後に縁三義観を引起す。此の観は無間に七処善を修す。

釈：行者が将に此法念住を修習せんとする時、先ず総体的に五蘊に縁って無我の行相を観行すべく、次いで五蘊の生滅を次第に観察す。此れは五蘊の無常行相を観行するなり。更に五蘊の縁起を観行す。此れは五蘊の空の行相を観行するなり。観行者が先ず身・受・心・法の諸行は因縁に随順して生滅有ることを観行すれば、斯くの如くにして因果の相属する角度より無我・無常を観行し易く、四聖諦理に趣入し易し。或る者は先ず五蘊の縁起を観察し、後続けて蘊・処・界の三法義に縁る観行を引き起こさんと欲す。此の観行方法は即ち無間断に七処善根を修習するなり。即ち色・受・想・行・識の五蘊に於いて、各々其の苦・集・滅・道・味・患・出離を分別観察す。

原文：七処善に於いて善巧を得るが故に。能く先来の諸の所見境に於いて、因果諦を立て。次第に観察す。斯くの如く熟修智及び定して已に、便能く順現観諦を安立す。謂わく欲界・上界の苦等各別なり。斯くの如き八に於いて、随って次第に観じ。未だ曾て修せざる十六行相を修す。彼は聞慧に由り、八諦中に於いて、初めて斯の如き十六行観を起こす。薄絹を隔てて衆色を見るが如し。此に斉しくして聞慧円満と名づく。

釈：七処善を修する時に善巧を得たる縁故に、能く先に観行したる一切の境界に於いて、因果諦理を建立し、即ち五蘊の苦・集・滅・道を明らかにし、次第に五蘊七善処を観察す。斯くの如く観行智慧と禅定を熟練して修習したる後、能く四聖諦に順ずる現観諦智を出生す。順現観諦とは即ち欲界と色界・無色界の各々の苦諦・集諦・滅諦・道諦等に随順する智慧なり。此の時は未だ現量観行智慧無きも、却って暖法善根を生起し、四聖諦理に背かざるなり。

斯くの如く四念住と四聖諦の八種の義理に於いて、其の次第に随い観行し、従前に未だ修したること無き十六種の行相を修習す。行者は聞法により得たる智慧に由り、此の八種の諦理の観行中に於いて、最初に斯の如き十六種行相の観行を生起す。此の時の智慧は恰も一重の薄き布絹を隔てて一切の色相を観るが如く、此処に至って聞慧は円満に修せらる。

聞慧が円満に修せらるる時、四念住と五蘊を観ずることは、薄絹一重を隔てて色を見るが如く、色の輪郭は見ゆるも猶ほ鮮明ならず、朦朧として、聞慧出現以前は一切法を観ること更に朦朧として明らかならず、無明甚だ重し。聞慧に修する時、無明稍々薄く成り、思慧及び修慧に修する時、無明更に薄く成り、及び証慧現前するに至りて、無明一部分断除せられ、三縛結断除せらる。

以上の論文中に述べられたる聞慧の特徴と修行過程を対照し、自己の聞慧が如何なる程度に修せられたるか、修習円満に達したるかを検察すべし。仮令已に修習円満に達せりと雖も、此れ僅かに聞慧の段階に在り、証慧よりは尚ほ遠き距離有り。若し若干年修して、聞慧すら未だ修せず円満ならざるは、応に自己の何れに差有るかを検察し、如何にして差を補い、如何なる措置を採るべきかを考え、速やかに駿馬に鞭打ち、精進して道を修すべし。

回向文：我らがネットワークプラットフォームの全ての弘法と共修の功徳を以て、法界の衆生に回向し、世界の民衆に回向し、世界平和を祈願し、戦争起こらず、烽火興らず、干戈永く止み、一切の災難尽く消退せんことを！ 各国人民の団結互助、慈心相向うを祈願し、風雨順い時を得、国泰く民安んぜんことを！ 一切衆生が因果を深く信じ、慈心以て殺さず、広く善縁を結び、広く善業を修め、仏を信じ仏を学び、善根増長し、苦を知り集を断ち、滅を慕い道を修し、悪趣の門を閉じ、涅槃の路を開かんことを！ 仏教の永き興隆、正法の永く住するを祝い、三界の火宅を変じて極楽の蓮邦と成らんことを！