如来蔵と記憶の関係（二）

しかし、私たちが前世の情報を感知できる場合がありますが、それはどのようにして可能なのでしょうか。これこそ如来蔵に依拠するのです。如来蔵に蓄えられた業種が熟し、現行する縁が具われば、業種は意根が縁取するか否かにかかわらず現行し法塵となります。意根がこれに触れることで、意識は一定の感知力を得ます。前世で熏習した内容も、意根が縁取して意識に了別させます。すると意識は同類の内容に再接触した際、苦労せず速やかに理解し記憶するのです。あたかも慣れた道を行くが如くです。

前世で熏習した法は、今世で接触すると即座に相応します。例えば前世で楞厳経を読誦し続けた場合、その業種は如来蔵に保存されます。今世で楞厳経に接すると、非常に親しみやすく順調に読誦でき、自然と暗誦できるようになります。これは今世初めて読むのではなく、前世で既に熏習したことを示しています。楞厳経読誦の業種が縁熟し意根が縁取すれば、意識心はそれを受用し、迅速に学習し確実に記憶します。文意が非常に親しく感じられ、今世の仏道修行が前世の業種と連動するのです。

今世で心経を読誦し暗誦できるようになれば、その種子も如来蔵に保存されます。暗誦後、再び心経を誦する際「観－自在－菩薩、行－深－般若－波羅－蜜多－時」と一字一句、一音節ずつ現れる法塵は、全て如来蔵の蔵庫から取り出されたものです。意根を経由し意識心が受用することで、意識は記憶能力を得て心経を暗誦できるのです。意識が学習し暗誦した内容は自ら保存できません。意識自体が生滅法であり、業種を保存する機能を持たないからです。仮に保存できても意識が滅すれば失われます。意識は自在でなく保管能力がないため、永遠に消滅しない如来蔵のみが確実に保存できるのです。

如来蔵に保存された種子は、意識心が必要とする時に取り出されます。この時意根を媒介とします。意識心が心経を誦したいと欲すれば、この欲望は意根に伝達されます。意根が了知し心経暗誦を決意すると、思心所が生起します。如来蔵は意根の思心所を了別し、心経暗誦の種子を送出します。意識が法塵を了別すれば、自然に心経が暗誦できるのです。一文字一音節が自然に現れます。

心経に不慣れで暗誦できない場合、暗誦の種子が存在しないため、文字や音節が現れません。最初の数文字は出ても、その後続かなくなります。如来蔵の蔵庫に暗誦の業種が保存されていないからです。如来蔵は自ら種子を作れません。蔵庫に在庫がなければ取り出せず、経本を開いて読むしかありません。