知見を立てることは即ち無明の本であり、知見無きを見ることは即ち涅槃である。

『楞厳経』に次の一節がある。「知見を立てて知とすれば、すなわち無明の本なり。知見無きを見れば、これすなわち涅槃なり」。まず「知見を立てて知とすれば、すなわち無明の本なり」とは、衆生は皆見聞覚知の心を有し、見ることも聞くことも覚えることも知ることもできるが、もしこの知性を真実と見做し、六塵の境界を知る知性を真実不滅の我として立て、未来世に至るべき常住のものと考えるならば、このような見解は邪見であり、無明の根本である。そうすれば六道の生死輪廻に流転し、解脱を得られないという意味である。

次に「知見無きを見れば、これすなわち涅槃なり」とは、観行を通じてこれらの見聞覚知の性が全て生滅変異する妄心であり、常住せず永遠に存在するものでもなく、真実の我でもないことを了知すれば、心の中ではもはや見聞覚知の性を我と認めなくなる。このような知見が確立されれば、我見を断じ、将来我執を断って無余涅槃を証得する。もし見聞覚知の上に、見聞覚知の性なき自性清浄心を証得すれば、本来の自性清浄涅槃を証得したことになる。

より正確に解釈すれば、「知見無きを見る」とは、六識の様々な知見の中に、いかなる知見も持たない本心である如来蔵が背後で常に作用していることを指す。「これすなわち涅槃なり」とは、その不生不滅の本心である如来蔵こそが涅槃の境地であり、すなわち涅槃心であることを示している。