愛楽妙香の過患
原文:仏は王に告げたまわく、然り、然り。愚かなる凡夫異生は、初め妙香を聞きて、すなわち愛楽を生じ、心に染着を起こす。かくの如き業を造り、身三・口四・意三種の業をなす。彼の業を造りおわりて、すなわち滅謝す。是の業滅し已りて、四方・四維・上下・中間に依りて住せず。乃至最後の識滅するに至り、自業現前す。夢覚えて夢中の事を念うが如し。
釈:仏は説きたまう、大王、まことにこの通りである。愚かな凡夫異生は微妙な香りを嗅いだ途端、愛楽を生じ、香りに心が染着する。貪瞋痴の煩悩業を造作する。悪業を造作した後、刹那に滅する。滅した後、業行は東西南北四維上下や中間に依って住することなく、跡形もなく消える。しかし命根が尽きる時、今生に造った業報がことごとく現前する。あたかも夢から覚めてなお夢中の事を思い出すが如し。
香りを嗅いで心に喜びと安らぎを感じ、愛楽心を生じれば、心は染着する。香りに貪愛しなければ喜びも感じず、無関心でいられる。愛楽心が生じれば、染着に縛られ、心は自在ならず、六道の境界に鎖され、生死を輪転して解脱を得られない。染汚心・粘着心・愛楽心は枷となり、五陰身を三界の大獄に牢固と縛り付ける。
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