瑜伽師地論 第十巻（十二因縁）

（五）問。何の因縁によって、無明などの諸有支はこのような次第で説かれるのか。答。一切の愚かな者は、まず知るべき事柄について愚痴を起こす。次いでその事柄について邪なる行いを起こす。邪行によって心が顛倒し、心の顛倒によって結生相続が生じる。生が相続する故に諸根が円満し、根が円満する故に二種の受用境（正報と依報）を得る。境を受用する故に耽着したり希求したりする。希求する故に方々求めるとき煩悩が滋長し、煩悩の滋長によって後の有（三界の存在）を生じる愛と非愛の業を起こす。起こした業の滋長力によって五趣の生死において苦果が生じ、苦果が生じた後には老死等の苦、すなわち内身の変異によって引き起こされる老死苦、および境界の変異によって引き起こされる憂嘆苦・熱悩苦がある。

釈：問い。十二因縁の諸有支がこのような順序で説かれる因縁は何か。答え。すべての愚者はまず知るべき事柄を理解せず、次にその無知によって邪行を起こす。邪行によって心が乱れ、心の乱れによって煩悩が生命を継続させる。六根が円満し、五陰身の正報と環境の依報を受用する。これにより耽着や更なる希求が生じ、煩悩が増長して来世の業を生み、五趣生死に苦果が現れる。老死苦や憂嘆苦などは身心の変化によって生じる。

原文：是の故に世尊はこの次第で十二支を説かれた。更に二種の縁による次第がある。一は内身縁、二は受用境界縁である。内身縁は前六支（無明・行・識・名色・六処・触）に属し、受用境界縁は後六支（受・愛・取・有・生・老死）に属する。まず内身に我執等の愚を起こし、業が招く苦果を理解せず業を起こす。業が識とともに未来の三苦（胎内の苦・出生後の苦・境受用の苦）を招く。名色を初めとし触を終わりとする。

釈：世尊は二種の縁（内身縁と境受用縁）に基づき十二支を説かれた。前六支は身心の形成過程、後六支は境遇の受用過程を示す。我執によって業の因果を誤解し、業が識とともに未来の諸苦（胎内苦・出生苦・境受用苦）を生じさせる。これらは名色を起点とし触を終点として現れる。