仏は王に言われました「耳で悪い声を聞けば憂い悩みが生じます。あたかも人が夢の中で、最愛の人と別離し、悲しみ叫び泣いて大いなる苦悩を生じるようなものです。どう思われますか。この人が目覚めた後、夢の中の事を思い出したとして、それは実在するでしょうか」王は答えました「いいえ、実在しません」仏は続けられました「王よ、この人が夢を見たことを実在だと執着するのは、智者と言えるでしょうか」王は答えました「いいえ、世尊。なぜならば、夢の中の親愛は畢竟存在しないからです。ましてや別離の事があろうはずがありません。この人はただ自らを疲れさせ、実体のないものに心を砕いていると知るべきです」
釈:仏は説かれました「大王よ、ある人が悪い声を耳にすると、心に憂いや悩みが生じます。あたかも人が夢の中で最も親しい人と生死の別れを経験し、悲痛に泣き叫んで心に大きな苦悩を抱えるようなものです。あなたはこれをどう考えますか。この人が目覚めた後、夢の中のことを絶えず思い返すなら、夢の中の事は実在するのでしょうか」浄飯王は答えました「実在しません」仏は続けられました「大王よ、この人が見た夢を実在だと執着するのは、智慧ある者と言えるでしょうか」浄飯王は答えました「その人は智慧がありません、世尊。なぜならば、夢の中の親愛は畢竟存在しないからです。もしさらに別離の事があったとしても、それは決して真実ではあり得ません。故にこの人は空しく実体なき人や事柄に心を悩ませ、全く益のないことをしているのです」
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