(一)原文:その時、世尊は比丘たちに告げられた。「私は内触法を説いたが、汝らはこれを取るか」と。時に一人の異なる比丘が座より起ち、衣を整え、頭を礼して足を礼し、合掌して仏に白して言う。「世尊の説かれた内触法は、私は既に取りました」と。時にその比丘は仏前において、かくかくの如く自ら記説するも、かくかくの如く世尊は喜ばれなかった。その時、尊者阿難が仏の後ろにいて扇を執り仏を扇いでいた。仏は阿難に告げられた。「聖なる法律における内触法は、この比丘の説くところとは異なる」と。阿難は仏に白して言う。「今まさにその時でございます。願わくは世尊、諸比丘のために賢聖の法律における内触法を説きたまえ。諸比丘は聞きて受け奉行するでしょう」と。
釈:世尊は比丘たちに言われました。「私が説いた内触法を、あなた方は取着できると思うか」と。この時、外から来た一人の比丘が座から立ち上がり、衣を整えて仏足を礼し、合掌して仏に申し上げました。「世尊の説かれた内触法は、私は既に取着しました」と。この比丘は仏前で様々に説法して自らを証明しようとしましたが、どの説き方も世尊はお喜びになりませんでした。そこで尊者阿難が仏の後ろで扇を持って扇いでいると、仏は阿難に告げられました。「聖なる法と律における内触法は、この比丘の説くところとは異なる」と。阿難は仏に申し上げました。「今こそ説くべき時です。どうか世尊、比丘たちのために聖なる法と律における内触法をお説きください。比丘たちは聞いて信受奉行するでしょう」と。
内触法とは何か。それは勝義根における触である。眼は色に触れ、耳は声に触れ、鼻は香りに触れ、舌は味に触れ、身は触塵に触れ、意は法に触れる。触れた後に識が生じ、識が再び塵に触れるのである。
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